ポータブル電源は、容量だけで選びません
「大容量を1台買えば安心」ではありません。何を動かし続けるか、使った電気をどう補充するかまで考えて、初めて停電への備えになります。
停電への備えは、「大容量のポータブル電源を1台買えば安心」というものではありません。電気は水や食料と違い、蓄えても使えば減っていきます。何を動かし続けたいか、何日の停電を想定するか、使った電気をどう補充するかまで考えて、初めて備えになります。
まず、止めてはいけないものを決める
家じゅうの電化製品を停電前と同じように使おうとすると、必要な蓄電容量はふくらみ続けます。まず、電化製品を優先順位で分けます。
- A:絶対に維持したい スマートフォン、Wi-Fiルーター、情報収集用の端末、医療機器、最低限の照明
- B:できれば維持したい 冷蔵庫、扇風機、パソコン、テレビ
- C:余裕があるときだけ 電子レンジ、電気ケトル、ドライヤー、IH調理器、エアコン
大事なのは「使えるか」ではなく、「使い続けられるか」です。
W(ワット)とWh(ワットアワー)を分けて考える
Wは、一度にどれだけの機器を動かせるかを表します。1500W出力の電源なら、合計1500W程度までの機器を同時に動かせます。ただし冷蔵庫やポンプは、起動の瞬間に通常より大きな電力を必要とすることがあるため、定格の消費電力だけで判断しません。
Whは、どれくらい長く使えるかを表します。1000Whの電源でも、その全量をそのまま使えるわけではありません。直流から交流に変える際の損失があるため、実際に使える量は表示より少なくなります。容量はカタログ値だけでなく、実効容量で考えます。
大容量1台か、中容量を複数台か
「2000Wh必要だから2000Whの電源を1台」だけが正解ではありません。1000Whを2台に分けたほうが向いている場合もあります。1台に集約すると、故障したときに電源をすべて失いますが、2台に分ければ片方が使えます。冷蔵庫と通信機器のように離れた場所で同時に使いたい場合や、持ち運びやすさ、片方を使いながらもう片方を充電する運用のしやすさでも、複数台に利点があります。必要な台数は、必要な電力量・置き場所・故障への備えを合わせて考えます。
車の給電能力で、必要な設備は変わる
「車を持っているか」だけでは足りません。ガソリン・ディーゼル・ハイブリッド・PHEV・EVのどれか、AC100Vのコンセントがあるか、最大出力は何Wかまで確認します。AC100Vの給電機能がある車種では、車そのものを非常用電源として使える場合があります。ポータブル電源の残量が減ったら車から充電する、という運用ができれば、巨大な電源を1台そろえるより、扱いやすい容量の電源と車の組み合わせのほうが現実的なことがあります。
停電の長さで、頼るものが変わる
数時間程度なら、ポータブル電源でスマートフォンや照明をまかなえます。半日から1日なら、冷蔵庫など必要な機器を維持しつつ、他は止めます。数日続くなら、電池を使うだけでなく、車から再充電するなど「補充する方法」が重要になります。さらに長期化すると、太陽光のように外部のインフラに頼らず電力を作る手段が要ります。
過去の地震で停電が何日続いたかは、「停電・断水は何日?」で確かめられます。
ソーラーパネルは、長期停電への備え
ソーラーパネルは、充電の速さだけで比べるものではありません。重要なのは、日中の消費をまかないながら、夜間に使う分を蓄えられるかです。ただしパネルの表示が400Wでも、天候・季節・時刻・パネルの向き・汚れなどで発電量は変わり、常に表示どおり発電するわけではありません。数時間の停電のためだけに毎回展開する必要性は低く、ソーラーが効くのは、車からの充電にも頼れない、数日以上続く停電です。
電源対策は「蓄える・補充する・作る」の3段階
| 段階 | 手段 | 目的 |
|---|---|---|
| LEVEL1 蓄える | ポータブル電源 | 発災直後から短期の停電を乗り切る |
| LEVEL2 補充する | 車からの充電 | 停電が1日以上続いても、電源を繰り返し使えるようにする |
| LEVEL3 作る | ソーラーパネル | 長期の停電で、外部の電力・燃料への依存を減らす |
冷蔵庫は、カタログ値より実測を
冷蔵庫はコンプレッサーが動いたり止まったりを繰り返すため、瞬間的な消費電力だけでは1日にどれだけ使うか分かりません。可能であれば、ワットメーターで24時間の実際の消費電力量を測ります。実測値が分かれば、手持ちの電源でどこまで維持できるかを現実的に見積もれます。
電源が残っても、通信できるとは限らない
スマートフォンを充電できても、基地局やその非常電源、回線そのものが被災すれば通信はできません。設備が無事でも、利用が集中すれば混雑することもあります。「電池を残すこと」と「通信の経路を残すこと」は、別の問題として考えます。固定回線・携帯回線に加えて、大規模な災害まで想定するなら衛星通信も選択肢です。すべての家庭に必須ではありませんが、地上の通信設備そのものが広く被災したときの、独立した経路になります。
家庭ごとに、正解が違う
同じ4人家族でも、車の有無や在宅の事情で必要な設備は変わります。人数だけでは、必要な電源設備は決まりません。
- 車を持たない集合住宅 蓄電容量そのものが重要になります。
- 給電できるハイブリッド車がある 車から再充電できる分、電源だけですべての日数をまかなう必要性は下がります。
- EV・PHEVで外部給電に対応 車自体を家庭の非常用電源として組み込める場合もあります。
- 在宅で医療機器を使う 一般の家庭より電源の冗長性を高くする必要があります。
シーン別の使い方
ポータブル電源は、停電時だけのものではありません。日常でも使う機会があると、いざというときに操作へ迷いません。
-
停電時
照明やスマートフォンの充電に。
-
キャンプ・アウトドア
電源のない場所でも、必要な電力をまかなえます。
-
災害時
情報収集や生活家電の電源として。
-
日常使い
普段から使い慣れておくと、いざというときも迷いません。
よくある質問
ポータブル電源は、何Whあれば足りますか。
世帯共通の目安はありません。維持したい機器の1日あたりの消費電力量を洗い出し、そこから逆算します。冷蔵庫はワットメーターで実測するのが確実です。
大容量を1台と、中容量を複数台では、どちらがよいですか。
一概には決まりません。片方の故障に備えたい、離れた場所で同時に使いたい、持ち運びたい場合は複数台に利点があります。管理のしやすさを優先するなら1台という判断もあります。
車があれば、ポータブル電源は要りませんか。
車の給電能力しだいです。AC100Vの給電機能がある車種なら、ポータブル電源を繰り返し充電するバックアップになります。給電機能がない車では、この使い方はできません。
ソーラーパネルは、必ず用意すべきですか。
短期の停電では優先度は高くありません。数日以上続く停電で、車からの充電にも頼れなくなったときに効果を発揮します。
スマートフォンを充電できれば、それで安心ですか。
充電できても、基地局や回線側が被災していれば通信はできません。電源の備えと、通信の備えは別のものとして、両方を考えます。
防災士監修(2026-09-28)・最終更新 2026-10-08